「世界が青く染まる時」

(文:河内一馬)

世界が青く染まる時… それは世界中の人々が「思いを一つにする」瞬間でもあります。今回は、ある「願い」を込めて行われている取り組みと、それを取り巻くサッカーのお話です。


世界自閉症啓発デー

(写真: http://www.zimbio.com)


皆さんは、毎年4月2日に世界のあらゆる場所が「青」にライトアップされることをご存知でしょうか?

日本で言えば、東京タワーやスカイツリーはもちろん、大阪城や白川郷など、全国各地でライトアップが実施されています。世界では、シドニーのオペラハウス、コルハードのキリスト像を筆頭に、多くの場所が「青」に染まり、「青」にちなんだイベントが各地で行われています。これは、自閉症をはじめとした発達障害を多くの人に知ってもらうために国連が定めた、「世界自閉症啓発デー」の取り組みの一つであり、今では136か国以上の国が、あらゆる場所を青く染めることで願いを一つにしています。 


その時サッカーは 

全世界の人々に、自閉症をはじめとした発達障害に対する理解を啓発する目的で定められた「世界自閉症啓発デー」に対して、サッカーはどのような貢献をしているのでしょうか?どんな人でもプレーすることができるサッカーというスポーツにおいて、「誰もが幸せに暮らす」ために定められた「世界自閉症啓発デー」はすごく大きな意味を持つと思います。


UEFAの取り組み

(写真:https://uefafoundation.org/news/12205/

 世界の子供達のために設立された「UEFA FOUNDATION for Children」では、2015年よりこの「世界自閉症啓発デー」の活動団体に、年次援助金を当てることによって貢献をしています。障害児に関する研究や活動を実施する「International Foundation of Applied Disability Research (FIRAH)」との共同よってプロジェクトは実施され、ロボットやタブレットなど最新の教材や機器を促進することや、自閉症児の家族・専門家の訓練を実施するなどの活動を通して、自閉症児とその家族の生活を改善し、未来への希望を与えることを目的としています。


日本サッカーの取り組み

(写真:http://www.jsgoal.jp/photo/n-00003216/

幾つかのJクラブでも、「世界自閉症啓発デー」に対しての取り組みが行われています。セレッソ大阪では、「世界自閉症啓発週間(4月2日〜4月8日)」において、事前のホームゲームにおけるポスター掲示や、当日のリーフレット配布などを中心に、自閉症啓発活動を行っており、アルビレックス新潟ではホームスタジアムである「ビックスワン」を青く染めることで、取り組みを実施しています。

(写真:http://www.jfa.jp/football_family/grassroots/news/00009427/

一般社団法人 日本障がい者サッカー連盟(JIFF)では、「世界自閉症啓発デー」に合わせて開催された「Warm Blue Day 2016」への参加を通して啓発を実施しました。これは「一般社団法人 Get in touch」が毎年実施しているイベントで、 JIFFは、障がい者サッカー紹介パネルの展示や、「青」いものを身につけた来場者との記念撮影、ブラインドサッカー体験会等を行いました。2016年の4月に設立されたJIFFが、これからどのような形で「世界自閉症啓発デー」に貢献をしていくのかは、日本サッカーの今後にとって、とても大きな意味を持つことだと思います。 


発達障害への理解 

このように世界中で多くの取り組みが行われていますが、自閉症をはじめとした発達障害については、まだまだ深い理解がされているとは言い難いと思います。もちろん私もそのうちの一人で、今回この記事を書きながら多くのこと学ぶことができました。発達障害は、その人によって症状や度合いが大きく異なり、なかなか理解をされにくいものだと言います。多くの人がこの「世界自閉症啓発デー」を通して発達障害を理解する必要があると感じました。 


サッカーと発達障害

 団体行動を基本とするサッカーというスポーツだからこそ、発達障害児を取り巻く問題をより知っておく必要があると思います。発達障害児の中には、集団行動が極端に苦手な子や、集中力が続かない子供がいます。これまでも、そのような子供たちがあたかも「劣等生」かのように扱われてしまうケースは少なくないのではないでしょうか。子供を取り巻く大人がしっかりと理解をすれば、そのようなことは起こらないはずです。この記事が「サッカー」というスポーツを通して「発達障害」を知り、そしてサッカーを通して啓発活動等の「行動」を起こせるきっかけの一つになることを願っています。  


終わり。


【プロフィール】

 河内一馬。 

 1992年東京都生まれ。「FOOTBALLとは、一体何なのか?」を探るためにアジア、ヨーロッパを周り、教育、文学、アート、カルチャーの視点からFOOTBALLを表現するウェブサイト『Looking for Football』を立ち上げる。https://lookingforfootball.themedia.jp