「サッカーはまだ本気を出していない。#morethanfootballから学ぶ日本もガチでみんなが力を合わせること」

(文:加藤遼也) 

「サッカーって何?」って質問されて、「11人対11人で足をつかってボールを相手ゴールに入れることを競うスポーツ」と答えた場合、その回答は100点な気もするし、50点、いや30点くらいにも思う。 

いやいや、各々の楽しみ方があるのだから、サッカーとはこうあるべきだと決める必要もないのだけれど。 

いや、それでもあえて個人的なエゴを出すと、競技性だけでなく、人や社会に良い影響を与える社会性を加えてこそサッカーでしょと言いたいのだが、ある活動を見つけて、「サッカーを理解しているのか?」と問いただされた気持ちになったわけです。 


その活動が、欧州の#morethanfootballキャンペーン。 


サッカーはまだ本気を出していない。

 もとい、私たちはまだサッカーの本気を引き出せていない。


 #morethanfootballキャンペーン 

(© PSV )


先週、欧州で初めての#morethanfootballキャンペーンが開始されました。

主体となったのは、European Football for Development Network(EFDN)。EFDNは、サッカーによる社会活動を欧州地域全体で促進することを目的とし、地元地域のみならず欧州レベルの社会活動への協力に高いコミットメントを約束する欧州の34クラブで構成されています。 今回の#morethanfootballキャンペーンの目的もそう、欧州のサッカーリーグ、クラブ、クラブ財団などの地域活動・社会活動を世の中に広める機会を提供するために実施されています。


 #morethanfootballキャンペーンにはなんと60以上のクラブ、クラブ財団、リーグ、NPO/NGOが参加し、UEFA Foundationが資金的なバックアップをしています。


キャンペーンの内容は、#morethanfootball Action Weekと名付けられた3月30日から4月9日の期間 、 各クラブらは実施した社会活動に#morethanfootballのハッシュタグをつけてSNS(Facebook, Twitter, Instagram)に投稿すると、#morethanfootballの特設サイトですべての情報が集約され広く世の中に発信される仕組みになっています。 


例えば、こんな感じです。 


取り組む社会課題も、障がい者支援、高齢者の健康促進、地域のまちづくり、人種差別撲滅など様々です。 プロモーションにはハッシュタグの他に、さまざまなロゴ素材、スタジアムのLED ボード向け素材なんてツールも用意されています。 

キャンペーン後は、各国、欧州全体での成果レポートを作成される予定で、それは「サッカーには社会を変える力がある」ことを示してくれるはずです。 


 #morethanfootballのすごいところ

 #morethanfootballの何がすごいかと言うと、

 1) Collective impactの実践

つまり、欧州全体のリーグ、クラブ、財団、NPO/NGOなどが力を合わせていること。その結果として、それぞれの専門性やネットワークの相乗効果により、情報発信力が爆発的に高まり、いち組織だけではリーチできない層に情報を届けられている。そして、その先には各々が取り組む社会課題改善の促進と各組織へのリターンが期待できる(この点は成果レポートの完成を待ちたいところ)。

 

2) 活動がひとつのウェブサイトに集約されていて情報にアクセスしやすい

 これまで海外のサッカーの社会活動の内容やトレンドを勉強しようにも、情報は様々なところに散っていたのですが、#morethanfootballのおかげで手軽に情報にアクセスできるようになりました。#morethanfootballは宝の山です。 


3) サッカーの力を活用した社会活動を「社会的責任であり、組織の競争力を高める戦略的ツール」と位置づけていること

以前の投稿でも書きましたが、各組織が社会活動を「できることをやる」起点ではなく、社会的責任として捉えているかどうかで結果に対するコミットメントは異なります。「サッカーの力を活用した社会活動はリーグ/クラブの社会的責任である」という思想が広がることは、サッカー界を超えたスポーツ界や豊かなた社会作りにプラスでしかありません。


 クラブはピッチにいる11人以上に大きな存在

 #morethanfootballは、今回実施した動機をこのように説明しています。 

「サッカー界においてメディアの注目は依然として1部リーグの試合、選手になりがちである。昨日の試合や明日の試合がいつもスポットライトを浴びるが、ほぼ全ての欧州クラブはピッチにいる11人以上に大きな存在なのです。サッカー界における社会や地域を良くする活動は、欧州クラブにとって有益な役割を担うようになっています。社会に対する責任とコミットメントを示し、他クラブに対する競争力やサポーターのロイヤリティを高め、クラブの風評リスクを下げるような 戦略的なツールへと発展しています。欧州全域で、サッカー協会、リーグ、クラブや財団はサッカーを活用したプログラムで様々な社会課題に取り組んでおり、コミュニティに大きな成果をもたらしています。しかし、こうした活動はふさわしいだけの注目を集めることに苦心している。そのため、欧州の公式キャンペーンとし#morethanfootball Action Weekを実施し 、ファン、スポンサー、その他ステークホルダーが彼らの活動を知る機会を提供しようとしています。」 

(©KAA Gent)


 日本でも真似しよう 

この動機は、私が日本のサッカー界についても感じているモヤっとしていた部分を言語化してくれました。 

日本でもメディアの中心は試合や選手になりますし、Jクラブや各地域クラブはいろいろな社会活動をしており、JリーグのHPでもすでにホームタウン活動の情報がまとめられているほどですが、欧州と同じような課題を抱えています。ひとつひとつの活動は素晴らしいものであっても広く知られることは困難です。 


 日本のサッカー界における社会活動はこのままで良いのでしょうか。 

良くありません。変えていかなければいけません。 


なぜなら、もっと知られるべき活動であり、評価される活動であり、その先に成果が期待できるからです。 

例えば、活動が世の中に広まることで、サッカーファンが今まで以上にサッカーを好きになる、サッカーに興味なかった人がサッカーに関心を持つ、サッカーの社会性に注目し企業や地域がビジネス機会として目を向ける、行政が社会課題改善のツールとして着目する、日本の課題解決が加速するなど。 つまり知られることで、「サッカーの社会活動」のポテンシャルが発揮され、クラブ自身も本来の利益を享受でき、ステークホルダーや社会に対しても本来の価値を提供できるようになります。


 今回の#morethanfootball キャンペーンは、世の中に広く知らせることを目的としていますが、知ってもらうことの先にはそのあたりの成果を期待しています。


 #morethanfootball キャンペーンを好事例として学び、1つのクラブ、1つのリーグだけでは難しいことでも、 クラブ、財団、リーグ、NPO/NGOが力を合わせることで発信力を高め世の中に広め、社会活動をすることの価値やリターンを最大限享受できるはずです。 



サッカーが本気を出すとき。

それはサッカーで繋がる私たちが力を合わせた時なんだと思います。 



私は#morethanfootball キャンペーンから日本サッカー界におけるガチでみんなが協力する(Collective Impact)の重要性を学びました。 love.fútbol Japanは、これから様々な団体、企業と連携していきますが、さらに多くの人たちと協力していきたい。みんなで協力して日本の社会課題解決に取り組んでいきましょう。   


終わり。


【プロフィール】 

加藤遼也 / https://www.facebook.com/ryoya.kato.12

love.fútbol Japan代表。1983年愛知県生まれ。2011年以降南アフリカ、アメリカ、ドイツ、日本のNGOで「サッカーを通じた社会問題解決」の分野でプログラム開発、事業計画、ファンドレイジングを担当。2013年、日本人で初めて同分野で世界を牽引する、「streetfootballworld」に所属し日本展開の事業計画策定に従事。その後、子ども支援を専門とする某国際NGOにて法人ファンドレイジング、緊急ファンドレイジングを担当。