”いびつ”なサッカーグランドで町を変える「The Unusual Football Field Project」

(文:河内一馬)

あなたは、どこでサッカーをしたことがありますか?

小さな頃の記憶を思い出してみてください。

もしかしたらあなたは、かつてサッカーを楽しんだ場所が、必ずしも綺麗に整った長方形ではなかったことを、思い出すかもしれません。

今回は、サッカーという可能性を大きく広げてくれる、そんなストーリーを紹介したいと思います。

The Unusual Football Field Project

タイ・バンコクにある人口密集地域「Khlong Toei」。この地であるプロジェクトが開始されました。

タイ最大手のディベロッパー「AP Thailand」と広告代理店「CJ WORX」によって始められたこのプロジェクトは“The Unusual Football Field Project”と名付けられ、その名の通り“普通ではないサッカーグランド”を作るということをコンセプトに行われているプロジェクトです。

このプロジェクトが行われているKhlong Toeiは、人口密度が非常に高く、サッカーを行うのに充分な環境も、スペースも存在していませんでした。ここに住む10代の多くは、自らの創造性を表現する方法を知らず、そしてそれに適したコミュニティー・場所がなく、必然的に、ギャンググループや暴走族に属してしまうことになります。

創造性を表現する場所

そのようにして作られていく悪循環は、子供達の悪い習慣を作ります。

そんな場所にサッカーのグランドを作ることで、10代が集り、創造性を表現する場所を創り出す。そういった思いが込められているのが、このプロジェクトです。

冒頭で書いたように、このプロジェクトがサッカーの可能性を大きく広げているという所以は、ここにあります。サッカーというスポーツが、ただの勝ち負けだけでは収まらないということを、証明してくれています。

充分なスペース

そもそも、サッカーをするのに「充分なスペース」とは一体なんなのか?どんな形なのか?どれくらいの大きさがあれば、サッカーをするのに「充分」なのか?この問いが、The Unusual Football Field Projectの一つの鍵だと思います。

このプロジェクトが他のものと一線を画すのは、そのコートの「形」です。サッカーグランドといえば、ほとんどの人が「長方形」をイメージすると思いますが、このプロジェクトでは、町で有効活用されていない幾つもの空き地を利用し、時には台形であったり、時には90°に曲がったスペースであったり、従来の常識を覆すサッカーグランドを作ります。サッカーをするのには「充分ではない」と思われているような場所を、サッカーをするのに「充分なスペース」に変えてしまうのです。

多くのものをもたらす「サッカーグランド」

グランドが作られた場所はかつて、人々の人糞や、窓から投げ捨てられた多くのゴミで埋め尽くされていたと言います。そんな場所にサッカーのグランドを作り、子供達が「創造性を表現する場所」が出来ることで、数え切れないほど多くのことがもたらされています。

CJ WORKはこう言います。

「私たちは、このアイデアが他のコミュニティーにも利用され、彼らの“いびつな”スペースを変えてくれることを願っている。」

これから先、このアイデアがKhlong Toeiの子供達の未来を変え、大人を変え、そして世界中のコミュニティーの未来を変えていくことになるかもしれません。

サッカーは、いつでも、どこでも、誰とでもプレーをすることができる。もしも、あなたがそれを望むのなら。サッカーは、姿形を変え、まだまだ多くの人に幸せを運んできてくれることでしょう。

僕としても、love.futbol Japanとしても、子どもたちが安全にサッカーできる場所づくりを担うことが出来れば、この上ない幸せです。

この“The Unusual Football Field Project”が、多くの方に知っていただけることを願っています。


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