FIFAとUEFAがスポンサードするNGOの正体とは。サッカーと社会活動の三方よし。

ドリーム・ジョブ。

きれいな海に囲まれた島の管理人、宇宙飛行士、石油王、トレジャーハンター、、、などなど人々を魅了する夢の仕事の数々。サッカー選手ももちろん夢の仕事ですが、サッカー好きなみなさんにとって「サッカーを通じて社会問題を解決する」という仕事はどう映りますか?

私はFIFAやUEFAがスポンサードし、この分野で世界を牽引する団体「streetfootballworld」を発見した翌日、辞表を出し南アフリカに行くことにしました。

今日の投稿では、「streetfootballworld」の思想や活動について簡単に紹介したいと思います。

「streetfootballworld(sfw)」は、世界各地のローカルNGO/NPOと連携し、サッカーを通じて各地の社会問題(例えば欧州や中東で民族融和、アフリカ諸国のHIV/AIDS感染防止、インドで女性の権利促進、米国で貧困地域の子どもに教育・就職支援など)の解決を支援しています。

私も念願の目標が叶い、2013年よりsfwに所属しアジアの事業展開に携わっていましたが、もっとも印象に残っていることの1つは「セクターを超えた協力」へのこだわりでした。

sfwは、サッカーを通じた社会問題の解決に対して、主に3つの方法でアプローチしています。

1つは、提携団体の支援。

sfwはプラットフォームとして提携団体に包括的な支援をしています。

毎年提携団体数は増え、現在は61カ国の101団体。

提携団体は、sfwから資金援助、教育プログラム開発やスタッフの育成サービスを受けられる他、他団体と情報交換や成功事例、失敗事例を共有しながら組織力を高めています。1団体だけではできることに限界がありますが、同じ想い・同じ課題を抱える世界の仲間と情報を共有しながら活動できることがおおきな魅力です。

2つ目は、企業との連携。

現在、adidas、coca-cola、SONY、SAPなど企業6社とパートナーシップを結んでいますが、ただ寄付を受けるだけの関係性ではありません。その企業の強みを団体支援や新しいプログラム開発に活用して、社会問題の解決に取組んでいます。

SONYの例を挙げると、2010年に実施されたSONYの映像・写真を活用した若者向けメディアトレーニング。このプログラムは、地域の現状を世界に発信することと、映像ジャーナリストの育成を目的にしています。ご存知のとおり教育機会が限られた途上国の若者にとって夢に挑戦すること、安定した職を見つけることは容易なことではありません。このプログラムに参加した子たちは、撮影、編集を学び、映像の発信、就職の機会を得ます。南アフリカでプログラム卒業生に会いましたが、世界的なスポーツシンポジウムで撮影を任されているほどでした。また、2014年には世界22カ国より提携団体の若いリーダー35人が参加するユースフォーラムをおこなっています。

3つ目は、レガシー政策。

実は、sfwにはFIFA(2005年〜)とUEFA(2006年〜)がスポンサードしており、

sfwはW杯やEUROのレガシー政策を担っています。例えば、2010年南アフリカW杯では、アフリカ大陸20カ所にサッカーグランドづくりを通じたコミュニティ開発。2008年EUROオーストリア・スイスでは、人種差別防止のプログラム開発・実施、2012年EUORポーランド・ウクライナでは、健康促進のプログラムの開発・実施をしています。そうしたレガシー政策が本当に「財産」として地域の発展に貢献していることは別の投稿で紹介しますが、重要なことは、こうしたレガシー施策も各地に根付いた提携団体とともに実施していることです。

このようにsfwは、草の根レベルの団体とFIFA・UEFAのようなサッカー界のトップレベル、世界のグローバル企業の3者を繋ぐ役割をはたしているわけですが、その背景には、社会問題を解決するためにはセクターを超えた関係者の協力が必要だと考えているからです。

これは支援を受ける側にとっても、支援をする側にとっても大切なことです。

サッカーとの関わりに限らず社会貢献の現状には、CSR活動してるよって言うことが目的になっているような現場のニーズに応えていない名ばかりの「社会貢献」や、逆に現場意識が高過ぎて企業ニーズに応えられず連携の機会を損失している団体も少なくありません。

sfwのCEOユルゲン・グリスバーグ氏はよく「己の利益を見るだけでなく、サッカー界全体が力を合わせよう」というメッセージを発信しています。

*「Resilient Dynamism, a Social Entrepreneur's View」

http://www.huffingtonpost.com/jurgen-griesbeck/resilient-dynamism-a-soci_b_2524121.html

サッカーのためになること、企業のためになること、社会問題の解決になること、そんな「三方よし」のsfwの仕組みは1つのモデルケースです。

もちろん日本においても基本となる仕組みです。

サッカーと社会活動が増えている中で、より一層みんなで力を合わせていきたいですね。



終わり