事例:サッカーを活用し社会問題解決に取組む団体(ヨーロッパ編)

前回のアフリカ編につづき、ヨーロッパの事例をいくつか紹介します。

元サッカー日本代表の宮本恒靖さんがボスニア・ヘルツェゴビナの紛争地に民族融和を目的としたスポーツアカデミー「マリモスト(現地語で小さい橋)」の設立を進めていることは、多くの方がご存知かと思います。

ヨーロッパ地域でサッカーを通じて社会問題解決に取組む団体は私が知っているだけでも20弱ありますが、その約80%が民族紛争や人種差別、障がい者差別などに対する「ソーシャル・インクルージョン」の活動をしています。

2年前、宮本さんと話をする機会があり、宮本さんが通っていたFIFAマスターについて聞いたところ、ゼミ講師の1人が実はstreetfootballworldの共同設立者Vladimir Borkovic氏だったと教えてくれました。

これが意味することは、サッカービジネスの枠組みで「サッカーを活用した社会の問題解決」も教えられているということです。

今日紹介する事例を見ても、サッカーがより具体的に社会を変えるために活用されていることが分かります。


●Sport dans la Ville

http://www.sportdanslaville.com

【活動国】

 フランス

【分野】

就職支援、ソーシャル・インクルージョン、教育

【プログラム概要】

ローヌ・アルプ州内で成長機会に恵まれない人や、就職難・失業に苦しむ人たちを対象にスポーツプログラム、ライフスキルプログラム、就職支援をおこなっています。サッカーだけでなく、バスケットボール、ラグビーのプログラムを無償で提供しており、参加者が安心して継続的に参加できるよう場所・曜日・時間帯ごとにコーチを固定していることが特徴です。また、14歳以上に希望者には民間企業の社員がメンターとなりジョブ・トレーニングを提供する他、20〜30歳には起業支援もしています。

 (c) Sport dans la Ville


●STREET LEAGUE

http://www.streetleague.co.uk

【活動国】

 イギリス

【分野】

教育・就職機会に恵まれない子ども・大人、 ホームレス、薬物服用者、犯罪歴のある人など社会的弱者に対する教育および就職支援

【プログラム概要】

サッカーの練習・大会と組み合わせて、就職のワークショップ、マンツーマンサポートの提供や、応急処置やリーダーシップの認定試験を実施しています。その他、健康的な生活を促進する保健・栄養のワークショップも提供しています。プログラムの結果、参加者の72%が正規教育に復帰または就職を実現し、犯罪歴のある参加者のうち75%が再犯をしていないなどの成果を挙げています。

 (c) STREET LEAGUE


●Sport Against Racism Ireland

www.sari.ie

【活動国】

 アイルランド

【分野】

人種差別、外国人差別、性差別などあらゆる差別

【プログラム概要】

国内に根付くあらゆる差別を解消するためアンチ差別のプロジェクトチームを構成する「Living Together Through Football」や、学校と協力して9歳〜16歳の子どもと若者の意識・行動を変えるプロジェクトを提供している。また、「Soccerfest」というアイルランドでもっとも規模の大きい文化交流サッカー大会を開催しています。特筆すべきは、昨年のBeyond Sportにて、ムスリムの女性にサッカーをする機会を提供するプログラム「Hat-tricks」がBest New Project賞を受賞したことです。

 (c) Sport Against Racism Ireland


●Teamplay@NAC

http://www.teamplaynac.nl

【活動国】

 オランダ

【分野】

ホームレス支援、環境保全、就職支援、人種差別、障がい者支援

【プログラム概要】

サッカークラブ「NAC」と連携して、様々な社会問題に対してプログラムを提供しています。失業した若者・高齢者が社会復帰できるように有給の雇用支援をおこなう「Nobody Offside」、学校を退学した16-27才が就職できるようビジネスの基礎能力教育や個別サポート、職業体験を提供する「Get Started」があります。面白い取組みとして、環境保全を啓発するために、サッカーリーグ戦に出場しているチームが地域のゴミ拾いをするとボーナスポイントを付与する「Green Grass」を実施しています。


(c) Teamplay@NAC


次回以降では、アジア、北米・中南米、中東の事例を紹介します。


終わり。